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「ホタルイカの身投げ」撮影について

ホタルイカの身投げ」撮影について、すぐ知りたいというかたは項目3から読んでください。項目1、項目2はこの記事を読むに当たっての前提になります。
それでも「長い!3行で説明しろ!」という方は、色のついた文字の所だけ読めば要点解るようにしてあります。


1.「ホタルイカの身投げ」とは。その話題性について。


2016/4/9、AM4:22撮影。

3〜5月の新月付近、富山湾ではごくまれに「ホタルイカの身投げ」と呼ばれる現象が起きます。春先になると深海に住むホタルイカが産卵のため浅瀬に上がり、約1年の寿命を迎えてまた深海へと戻るはずが砂浜へ上がってくる現象。数匹単位で上がってくることはよくあるのですが、ごくまれに大群となって上がってくることあります。

ホタルイカは身の危険を感じると、触手先端の発光体が青白く光ります。砂浜に打ち上げられたホタルイカはもがきながら光り、それが大群となることで浜辺一面が青白く光り、カメラで撮影時、露光時間長めにすることで先ほどのような写真が撮れます。

地元では愛甲喜一郎さんが北日本新聞への投稿や、ミュゼ福岡で開催されてるネイチャーフォトコンテストで発表し大賞受賞したことで知られてましたが、その後YUKISON( http://yukison.com/ )さんが撮影に成功しブログ等で発表、そこから話題が広がり「死ぬまでに行きたい! 世界の絶景 日本編」等の書籍に掲載され、世界レベルで話題となる風景になりました。


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2.「ホタルイカの身投げ」を巡る現状

現在、多数のサイトがこの現象について語り、確実では無くとも出現の可能性ある条件や場所について広く知られるようになりました。そうなることで「ごくまれに、奇跡的にタイミング合えば見られるかもしれない」状態から、「見られる可能性ある日を選んで行ける」状態となり、以前よりも発見難易度がぐんっと下がりました。

それに伴い急増したのが、ホタルイカ漁目的のレジャー。産卵を終えたホタルイカなので、乱獲で絶滅の心配が無いためか漁業権など必要なく、獲ることについて自由となってます。(沖に出て掬うのは禁止とされてます。)

結果、深夜の浜辺に全国から人々が押し寄せ、大量の身投げがあったとしても先に掬われる状態となり、青白く海岸が光る現象を見る機会がかなり限られました。最近では近隣住民から騒音やゴミの被害についての苦情が寄せられてるらしく、来訪者のマナー向上が求められてます。
自分が浜辺に行った際、会った人の割合で言うとホタルイカ漁:観光:撮影の割合は8.5:1:0.5ぐらい。ほとんど獲ることを目的とした人の来訪でした。



先に観光(浜辺が一面にそまる現象)目的の方にお伝えしたいのは、まず無理です。

撮影目的の方向けへのアドバイスで後述しますが、自分は足掛け5年、30回近く挑戦してようやく今年撮影に成功しました。強運の方なら出会えるかもしれませんが、ふらっと行ってあえるのは無理です。


それよりもお勧めなのは、滑川市観光協会が行っている「ほたるいか海上観光」、こちらなら確実に光るホタルイカを見ること出来ますし、ホタルイカより獲る人の多い浜辺で数匹だけ見るより迫力あります。ただし事前予約必須です。




3.それでも「ホタルイカの身投げ」を撮影したい方へ

ホタルイカ漁目的としたサイトは多数ありました。ただ、このような写真を撮りたいと思う人に向けた記事がないようですので、撮影を目的として訪問する方へのアドバイス、あと自分が撮影できた経緯や労力について、書いていこうと思います。
まず最初に、撮影するに当たって必要な物や、カメラの設定についてです。

・必要な物
□一眼カメラ、もしくは露光時間変更できるハイクラス機
 … スマホコンデジでは厳しいです。
□三脚
 … 露光撮影時には必須です。
□リモコン
 … 夜の撮影には必須です。
□ダウンジャケットなど厚めの上着
 … 春の海、昼は暖かくても夜は寒いです。
□レッグウェア、タイツ、ももひきなど
 … 特に足が冷えますので推奨。自分はスキーウェア着てました。
□使い捨てカイロ
 … 寒さ対策の一つ。
□指先操作できる手袋
 … 寒さ対策の一つ、自分は軍手の指先をハサミで切って使ってます。
□長靴
 … 波の高さは一定ではありません。突然足首以上の高い波が来たりします。サンダルなどでは海が冷たいのですぐ帰りたくなります。
□ヘッドライト
 … 両手が空いてる状態で使えるライトは利便性が格段に違います。
□明るい懐中電灯
 … 明るければ明るいほど、泳いでるホタルイカを見つけやすいです。300ルーメン以上推奨、ただし値段が5千円近くします。

・あれば良い物
□タオル
 … 三脚など塩水ついたままだと錆びます。撤収の際に拭ける物の用意を。
□飲み物と軽食
 … 長時間粘ることになるので、おやつ程度の物があったら良いです。
□折り畳み椅子
 … 長時間粘る際にあると便利。


次にカメラの設定についてですが、それぞれのカメラや、撮りたい写真のイメージで最適数字が変わってきますが、それでは難しいと思うので参考までに、自分が撮影時の情報を載せます。
Canon EOS 5D MarkIII使用、Canon EF17-40mm F4L USMレンズ、焦点距離17mmマニュアルフォーカス、絞り値f/5.6、ISO-2000、露光20秒。
タイムラプス撮影も視野に入れてたので、露光時間が短めです。もっと長く露光してれば、よく各種サイトで見かけるような濃い青色の続く風景になります。

装備や設定を見て気づく方おられたと思いますが、ほぼ星空撮影と同じ設定です。
千載一遇のチャンスに恵まれ、せっかくホタルイカの大量身投げを目の当たりにしたのに、カメラ設定を把握してなかったために上手く撮れなかったのでは悔やんでも悔やみきれません。
星空撮影で慣れておけば、ホタルイカの身投げも綺麗に撮れますので、ぜひ普段から星空撮影に挑戦、練習してみてください。


同じような設定で撮影した星空(立山黒部アルペンルート、室堂平8月)。この時の経験が今回生きました。

次からはいよいよ本題、撮影の機会に巡り会う方法についてです。



4.撮影のチャンスをつかむ方法

そもそも、自分がなぜ「ホタルイカの身投げ」一つ写すのに、30回近く撮影失敗続いたのか…要因は4点あります。

・日
・時間
・場所
・人

日については、出やすいとされる日、出ない日とあります。出やすい日についてはすでにホタルイカ漁をメインとしたサイトで列挙されてますが、こちらにも引用します。

>「時期」は3〜5月(6月に見られることもある)
>「時間」は深夜から未明にかけて
>「場所」は神通川や早月川の河口付近
>新月前後(月の見えない夜)の日
>深夜から未明にかけて満潮になる日
>晴れていて海中がきれいな日
>南よりの風が吹いている日
>波が穏やかな日
( 氷見の民宿「青柳」さんのサイトより。 http://himi-aoyagi.com/hotaruika_minage.html

この条件から離れるほど、出にくい日とされてます。しかし、自分が撮影できた日は「出ない日」でした。新月前後で暖かい日でしたが前日午前まで豪雨があり、川から泥を含んだ水が大量に海へと流れ汚れてました。にもかかわらず撮すこと出来ました。この一概に断定できないところが、出会えるのを難しくしてます。


時間については、同じ夜でもいつ起きるか解りません。

自分はこの日、翌日仕事のため23時頃で引き上げました。


flying-frogさん( ‏@flying224frog )は午前4時、撮影に成功してます。
出そうな日は明け方まで粘る。しかし、次の難関は場所です。



前回の失敗を踏まえ、岩瀬浜でずっとカメラを構えてました。とりあえず撮れたホタルイカの光はこのぐらい。これより多くなる前に掬う人に拾われて行きました。

露光中にライト持った人が横切ると、このようになりホタルイカの光だけを撮すことは出来ません。

同日同時間帯、有名写真家のKAGAYAさんは別の場所でカメラを構え、「ホタルイカの身投げと星の軌跡」を写されました。

星が軌跡になるほどの露光でありながら、掬う人のライトが写ってないという、最近の混雑多い海岸では絶対に撮すことの出来ない1枚。どのようにして場所を選んだのか?別アカウントでこのように呟かれてました。


身投げのある海岸を夜中に探し走ってた様子。一カ所に留まらず、とにかく探し歩くのも方法です。あとこの海岸は砂浜から岩場になる辺りのようで、掬う人にとって獲りにくいので夜に歩くのを嫌がる場所。人が訪れないポイントを上手く見つけ出した結果でもあるようです。



撮影成功した人の事例を参考にし、迎えた新月の日、出やすいとされる条件全て揃った2016年4月7日。颯爽と向かった八重津浜は、驚愕の風景でした。

見渡す限りの人・人・人。駐車場は満杯、路上にも駐車が溢れパトカーが取り締まっていました。
例え大量の身投げがあったとしても、写真どころではない状態。早々に諦め、別の場所へと向かいました。

この日、自分は富山の海岸線を全て見て歩きましたが、どこも大量とは言いがたい、数匹程度の身投げしか確認できませんでした。
一時、twitterで「魚津漁港で爆湧き!」という書き込みありましたが、個人の感覚によるものだったようで、写真になるような湧き方はではなく…明け方近くになると強風、高波となり、雨が降り始め終了となりました。


翌日は雨、翌々日の昼から晴れ、穏やかな海となりましたがネットでは「雨の後、川から泥を拭くんだ水が大量に海へ流れたので、塩分濃度に敏感なホタルイカは出ないだろう」と言われてました。
しかし深夜「沢山湧いた!」との情報。急いで八重津浜行きましたが、前回同様車を停めるスペースすらなく、別の海岸へと行きました。
その海岸ではポツポツ現れる程度。でも人も少ないので長時間露光すれば撮せるだろう…と思ってましたが、10分に1人は必ず掬う人が来ました。掬う人は穴場を探し延々海岸線を歩き、1匹2匹でも捕まえられたら歩き続けてきます。
海岸が青くなるよう撮せる前にライトの光が必ず入り、撮影目的の人に穴場は無いことを実感しました。


その時、「沢山湧いた」と言われた割に少ないことに気づき、KAGAYAさんの例もあったことを思い出して別所の海岸へ移動。そこでようやく、願っていた大量の身投げを見ることが出来ました。この大量に上がる場所というのがとてもシビアで、防波堤一つ超えると全くいない…という光景でした。富山湾全域で発生するのでは無く、局所的に発生するようです。



自分がたどり着いたとき、すでに大量の身投げも満潮もピークは過ぎてた様子。そのおかげで掬う人は先にクーラーボックスなど用意してた容器が一杯になり、これ以上持って帰れないという状態となったため引き上げる人が多数となってました。まだ続けて掬う人もいましたが、大量に湧いてるため海岸を行き来せず、網を掬うだけでどんどん取れる状態となったため、その場に留まるようなりました。
そうして海岸線を歩くと、掬う人がほぼいない場所を発見。奥に人がいるにはいますが、写真の構図上目立たないであろうと判断し三脚を固定、撮影しようやく念願の写真を撮ることできました。

前日の大雨でこの日は出ないだろうと予想し漁に出なかった人がいたらしい事、マイナーな海岸なので訪れる人が他と比べると少なめだった事、来た人以上の大量身投げで沢山獲れて満足し早々に帰ってくれた事…様々な幸運が重なった結果撮せました。
しかし、このように撮せたと言う事は掬う人にとっては羨ましい場所。場所を明示すると穴場ではなく定番の大量身投げスポットとなり、写真に写せなくなる可能性高いです。
そのこともあり、どこで撮したかを伏せる事にしました。



最後に、認識の違いについて。風景写真目的の人や、綺麗な景色が見たい観光目的の人にとってホタルイカの光は、自然の神秘を実感できる美しい光です。
しかし大半の人はレジャー感覚で来ています。時折見える青い光で喜び、拾えることを楽しんでいます。中には食い扶持として必死な人もおり、ホタルイカの光を銭としか見てないような人も何人か目の当たりにしました。

世の風潮として、ホタルイカの身投げは潮干狩りと一緒になってます。他人に知られず穴場を見つけ、自分だけガッポリ獲得したいというのは誰しも持つ願望です。漁として禁止されてない以上、場所を明言するとそのような人を呼び込んでしまいます。今後、同様の写真が撮れる機会があっても、場所の明言しない事を推奨します。


以上、自分の体験を元にした「ホタルイカの身投げ」撮影についての話でした。場所の明示はされなくても写真や動画を見るのは好きですので、もしこの記事読んで撮影に成功したとかあれば是非見せてください。思い出の1枚が撮影できたお手伝いができたならば光栄です。

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