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南砺市オリジナルアニメ「恋旅〜True Tours Nanto〜」 完成披露試写会(ネタバレ無し)

4月28日から富山県南砺市でのみ見る事ができるオリジナルアニメ、「恋旅〜True Tours Nanto〜」が配信開始となりました。今回、この完成披露試写会に当選したので視聴にじょうはな座まで行きました。

アニメの内容は、南砺市の舞台や風景を使用した3組男女のラブストーリー。こう書くと「たかが観光アニメ…」と思いがちですが、スタッフやキャスト、制作会社が本格的なアニメ制作の現場で有名な方々ばかりを起用しているという贅沢な内容です。

アニメーション制作は城端に拠点を置き、高クオリティ作品を続けて発表している事で注目されているP.A.WORKS。「true tears」「CANAAN」「花咲くいろは」「Angel Beats!」「Another」「TARI TARI」「R.D.G」等、いづれも高評価です。
監督は西村純二さん。「プロゴルファー猿」「逮捕しちゃうぞ」シリーズから、「シムーン」「DOG DAYS'」など長年にわたり第一線で監督をされてます。
脚本は岡田麿里さん。「true tears」「とらドラ!」「花咲くいろは」「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」など、繊細な心の描写に定評あり、人気ある方です。
キャラクター原案はtanuさん。TVアニメ「TARI TARI」でキャラクター原案、ゲーム「AKIBA'S TRIP」でキャラクターデザインを担当。
音楽は松田彬人さん。TVアニメ「涼宮ハルヒの憂鬱」「みなみけ」「咲-Saki-」「CANAAN」「神様のメモ帳」など、アニメやゲーム関連の作曲に多く携わってます。
主題歌はeufonius。「メグメル 〜cuckool mix 2007〜」「神曲奏界ポリフォニカ」「true tears」「ヨスガノソラ」「マイの魔法と家庭の日」など、いろいろなアニメの主題歌に起用されるほどの人気を持つ、きれいで伸びのある高音が特徴の歌声を持つアーティストです。
声優は増田裕生さん、名塚佳織さん、吉野裕行さん、高垣彩陽さん、石井真さん、井口裕香さん…と、人気アニメと呼ばれる作品にはほぼ参加してるような方々。

このような、スタッフやキャストだけ見ても期待出来る作品。とはいえ、所詮行政アニメ…期待半分、不安半分で見に行きました。

9時半会場前から、すでに当選者が周辺に集結。それと同時に富山テレビNHK富山放送局、砺波CATV、北日本新聞、朝日新聞など各マスコミも続々と集まり、周辺はずいぶん賑やかな様子となりました。

会場から開演までの1時間、手渡されたパンフレットを見たり、アプリのインストールをしたりする来訪者。フロアではマスコミ各社がインタビューしたりしてました。写真は南砺市の田中市長。



10時半開演。南砺市交流観光まちづくり課のナカイさんが司会進行。まず田中幹夫市長の挨拶から。
トゥルーティアーズ…?トゥルーツアーズでしたねw」「5年ほど前にトゥルーツアーズで城端を知って…あ、トゥルーティアーズでしたねw」と、何度か混同して笑いを誘いながらも、「ぜひこの作品を通じて文化・風景・風土を知ってほしいです。」とのことでした。そして、「アニメーションツーリズムの力は大きく、今後ますますの発展に期待したい」とこのアニメによる来訪増加にとても期待を込めた挨拶でした。

挨拶後、本編上映。福光・井口・城端エリアをモデルにした「匠と夏子」編。井波・平・上平エリアをモデルにした「晴喜と葵」編。利賀・福野エリアをモデルにした「耀司と千晶」編の順番に上映。それぞれ前編・後編に分かれており、1話5〜10分ぐらい。

視聴して驚いたのは、とてもクオリティが高いという部分。いくら有名スタッフそろえたからと言っても所詮観光アニメ、無理矢理な観光地紹介にとってつけた話だろう…と高をくくってたのですが、まったくの逆でした。ストーリーがあって、そこに色を添える素材として南砺市の風景や文化が使用されている様子…行政主導とは思えない大胆な判断。そのためキャラクターが生き生きと描かれ、なんら普通のアニメと変わらない、それ以上に素敵な作品に仕上がってました。

もう一つ驚いたのは、各編ごとに主題歌が違うということも。「匠と夏子」編はPVにも使われている「Paslaptis」。「晴喜と葵」編は明るいポップ調の「君の引力」。「耀司と千晶」編はしっとりとした大人のバラードを漂わせる雰囲気の「sympathetic world」。高クオリティなアニメ3話分と、それぞれ違うエンディング曲…どこまで本気で妥協無く制作したか、その意気込みが伝わってきてただただ驚かされました。

本編上映後、ゲストによるトークショーへ。制作プロディーサーの永谷敬之さん、P.A.WORKS代表取締役 堀川憲司さん、西匠役の声優 石井真さん、監督の西村純二さん、脚本の岡田麿里さん、P.A.WORKS専務取締役 菊池宣広さんの5名が登場。ここからは司会を永谷さんが引き継ぎ。「完成披露試写会と堅い名前になってますが、そういうのは苦手なのでいつもどおりの雰囲気で進めさせていただきます(笑)」よく見慣れた顔ぶれということもあってか、ラフな雰囲気で進行が始まりました。

まずは企画の経緯について。菊池専務「2年ほど前にエリアワンセグ開始記念イベントがあり、普段なら堀川さんが参加するところを自分が参加してた。すると前の席に座ってた田中市長がふと振り返り、『南砺市のアニメを作らないか』と一言(笑)。」とのこと。2年前からすでに企画の進行があったということで、作品自体は短くても長い月日があっての作品だったようです。

西村監督は、依頼を受けてロケハンしても、過去何度も来たために初めてという感じがせず、馴染んで制作することが出来たと言われてました。作中に登場する旅館は実際に監督が泊まったところで、そこの女将さんや、いのくち椿館の館長はそのままモデルとして登場してるとの事です。
制作の苦労話に、瞑想の郷(みなさんうろ覚えで瞑想の館と呼んでましたw)に向かう際、冬季閉鎖中のところを無理に進んだせいで堀川社長の車が雪で立ち往生するという事態があったとのこと。しかしそういうのを乗り越えて見た瞑想の郷にある曼荼羅(まんだら)は本当に感動的だったそうです。その印象を持って次に8月再訪したら、見た印象が全く変わってて、イメージしてたのが使えなくて困ったという話もされてました。

脚本の岡田さんは、赤祖父湖下流にある円筒分水嶺へロケハン行った際、西村監督からそこからなかなか動かなくて困ったという話を披露。動かなかった理由は「どこまでが人工物で、自然なのかわからないところに惹かれた」とか。この感想はそのままアニメ作中にも使われてました。

声優の石井さんは、5年前の「true tears」スタッフやキャストほぼ同じメンバーで集まれた事が嬉しく、懐かしいとのこと。
そのコメントを聞いて永谷さんが西村監督と収録の帰り道に「石井くん安定してるね、変わってないね」と語ってた事を披露。「それは喜んでいい?良い意味でですかね?」と石井さんが西村監督に問いかけると、「石井くんが変わってないと言うより、主役3人娘(名塚佳織さん、高垣彩陽さん、井口裕香さん)が大人になったなと…」しみじみ呟きました。「昔の少女の感じは無くなって、いろいろ大人になったなと…そちらと比べて石井君は昔のままだったな」とコメント。すかさず永谷さんが「『そのままの君でいて』ってことですねw」とtrue tearsの代表な挿入歌「そのままの僕で」をもじって会場を沸かせました。

次に菊池専務より、アプリの使い方について説明…しようとしましたが、なぜかiPadの画面が大スクリーン上で横向きに。「顔を横にしてみてください…でも無理ですねw」ということで一旦席を離れて調整。きちんと横向きに表示されるようになったことで再度戻ってきましたが、説明中に画面が消えてロック画面に。思わずタタタタっとパスワード解除したので、大スクリーンにパスワード番号披露してしまうと言うハプニングが発生、会場大爆笑。菊池専務「今のは忘れてー!!(笑)」
気を取り直し、アプリの解説。視聴方法や、キャラクターと記念撮影出来る機能、AR機能など説明。一度動画をダウンロードすると、南砺市を離れても見られるし、高画質版も見られるとのこと。自分の持っているスマホは残念ながら古すぎてアプリのインストール出来ませんでしたが、さっそく今日から各地でその機能を活用されてる方が多かったようです。
あと、今回の観光名所を効率よく見て回れる観光バスもあるので、ぜひ活用してくださいとのこと。
菊池専務「車で行かれる方、ほとんどの箇所には駐車場ありますが、場所によっては駐車場無いので近隣住民の迷惑にならないよう注意してください。特に厳浄閣(がんじょうかく)辺りは…」永谷さん「迷惑かけると死にますね(笑)」(P.A.WORKS作品「Another」で「Anotherなら死んでいた」という言葉が生まれるくらいキャラクターが不運、不条理に死んでゆく作品に絡めたネタ)

次に見所について紹介が。
西村監督は「全体の話になりますが、1つ1つ全ての話にクライマックスを入れるようにした。その部分に苦労した。」
各話については、「ハーモニクスの表現」をあげられてました。ハーモニクスとは水彩画風の1枚絵で印象的に表現する手法。西村監督と言ったらハーモニクス…というくらいによく多用されてるそうです。今作にも同様に印象的な場面で使われてました。
あと疑問に思って悩んでたことあると、「岡田さんに『わからなかったらすぐ質問する!!』と叱られたので(笑)聞いてた。」するとあっさりと回答が貰えたことがあり、質問はしたほうが良いと気づかされたという話も。
話によっては「前編だけ見ると暗い気持ちのままになるのがあるので(笑)後半も見たくなるようにしてある」とのこと。

脚本の岡田さんからは、ロケハン時に「こきりこ節は替え歌もあった」と聞いて「(そのネタ)もらった!」と閃いたり、福野夜高祭でお互いの御輿を破壊する話から組み立てたりしたとのこと。「耀司と千晶」編では地上波アニメでは描く事の無い大人の恋愛を書いたので楽しかったと。言われたとおり、その話ではどことなく倦怠感ある大人の雰囲気がよく表現されてて、「この話だけで十分1クールアニメ作れるのでは?」と思える脚本でした。

いのくち椿館の話題もありましたが、永谷さんが聞くときについ声優名と間違えて「いぐちで印象的なシーンは…違いましたね、いのぐちでしたね(笑) 漢字一緒だから間違えますね」と語るシーンも。

そのまま話が続きそうなところを菊池専務が「時間押してますよ」と言った事で、話を切り上げて質問コーナーに。
配信期間についての質問は「期限ありませんので、ゆっくり見て回ってください。富山や北陸観光のついでに南砺市寄っていただければと」。作品のキャストについて、キャラが先かキャストが先かという質問については「わりと南砺市観光大使で何か作りたいという気持ちがあっての今作なので、キャストが先ですね」と言う回答でした。


ここでゲストは一旦退席し、eufoniusriyaさん登場。「昨日、羽田から富山に着き、雪が残った山々を見て富山に来たと実感。実家と東京についで、南砺市は馴染みのある場所になってます。このアニメと3つのストーリーに、この歌もお供させていただければと思います。」と語った後、テーマ曲3曲「sympathetic world」「君の引力」「Paslaptis」を歌唱。

最後に全ゲストと田中市長がそろい、みな一言づつコメント。永谷さんは「これから南砺市ですれ違ったら、挨拶は『こんにツァー!』でお願いします!」と合言葉を提案。菊池専務は「画面が横になったりパスワードばらしたりして失礼しました(笑) とても素晴らしい作品と新しい技術で楽しめるようになってますので、ぜひ各地域を回って楽しんでください」とのこと。堀川社長は「これからその辺りの田んぼで田植えしてると思います(笑) みかけたら『こんにツァー!』と挨拶しましょう(笑)」とさっそく新しい挨拶。
他のゲストも短く挨拶をされて、最後に田中市長が「制作に協力いただいた皆様に、心から深く感謝します!本当にありがとうございました!」と力強く感謝の言葉を語られて、イベントは終了となりました。

この作品、途中にも書いてますが本当にクオリティが高く、地域限定がもったいないと思えるくらいの作品です。この作品を見るためだけに南砺市を訪れても絶対損に感じない内容。そして、見たらそのモデル地を見て回りたくなります。ぜひ富山県や北陸近県旅行予定をたて、その道中に南砺市も加えていただければと思います。


以上、「恋旅〜True Tours Nanto〜」のイベントレポートになります。
アニメの詳細については、下記公式サイトをご覧ください。
http://www.koitabi-nanto.jp/